あの夏に僕がここへ来た理由





海人の一番下の妹は、どこに行くにも海人の後をついてきた。
まるでもう永遠に会えないと分かっているかのように、海人にまとわりつきおんぶをせがんだ。


海人も少しでも皆に心配をかけないよう冗談を言って妹達を笑わせた。

そして、海人は妹達にたくさんの話をした。

戦争のない日々が必ずやってくること、幸せになる権利があること、たくさん本を読んで勉強して自分自身を高めること。


海人は学校へはほとんど行けなかった。
たまに行ける日があると人一倍勉強し図書館でたくさんの本を借りた。
毎日学校へ行ける友達が羨ましかったりしたが、でも自分の父親のいない運命を嘆くことはせず素直に受け入れた。
だから、妹達は毎日学校へ通わせた。



海人が毎日夢に見ている将来を妹達に託すかのように、別れる日の前日まで妹達に優しく分かりやすく話して聞かせた。