その日は、蝉の声が倍に聞こえるほどの暑さだった。 いつもの海岸沿いの道への散歩を珍しく変更したひまわりは、小さい頃によく祖父と一緒に出掛けた小高い丘の上にある公園まで行くことにした。 夕方前に出発し夏特有のスコールを想定して折り畳みの傘は忘れずに持った。 古びた階段の近くまで辿り着いたところで、案の定空の色が変わってきた。 ひまわりは階段を上った先に東屋風のベンチがあったことを思い出した。 一目散に階段を駆け上り、大粒の雨がポツポツ降り出すと同時にベンチに滑り込むことができた。