海人は関東の山奥で生まれたせいで、海に行ったことがなかった。
母の次子は妹達の世話に忙しかったため海人は小さい時から畑仕事を任されていた。
海人は裕福な友達から海水浴へ行った話を聞いては、海というものを想像して楽しむほどに憧れていた。
しかし、今の僕は変わってしまった。
海への憧れなどは全くなくなり幻滅に近い嫌悪感すら抱いている。
街並みが途切れた先に腰ほどのブロック塀が見えてきた。
ひまわりは歩道から海へと続く階段を駆け下りていた。
「海人さ~ん、早く~~」
ひまわりの声は弾んでいた。
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