あの夏に僕がここへ来た理由




すると、海人が急にその女性に近づき「こんにちは」と挨拶をした。


「おりこうさんね~

お名前は、何て言うの?」



「僕の、お名前は、佐藤海人です」


海人は、笑顔でそう答えた。

その女性はハッとした顔で「海人っていうの?」とひまわりに聞いてきた。

ひまわりは頷づくと、海人にこう言った。


「ここにいるおばあちゃんのお兄ちゃんの名前も、海人っていうんだよ」


ひまわりとその女性は、目を丸くして考え込む小さな海人を見て、少し笑った。
海人は、お墓に向かって「一緒?」と言っている。


そして、ひまわりは、もう一度、お墓に手を合わせてそろそろ帰ることにした。

すると、海人はいつのまにかその女性と手を繋いでいた。


「海ちゃん、そろそろ帰ろうか?」


ひまわりが海人にそう声をかけた。


「さようなら、たみちゃん」


海人はその女性の手を握りながら、もう一度言った。


「たみちゃん、またね」




たみちゃん・・・

私は、海人から聞いて知っていた。
海人の一番下の妹の名前・・・



たみちゃんは、いつでも僕の膝の上に乗ってくるんだ・・・・