「兄は、戦地で亡くなったということしか私達家族には伝わらなかった。
でも、かなりの時間が経ってから、遺族会の集まりで母が兄の最期を看取った方と偶然知り合えて、そこで初めて真実が聞けたの・・・
兄は、瀕死の状態だったけれど、一か月ほど心臓は動いていたらしい。
その方が言うには、ちゃんとした病院で手当てを受けていれば絶対に死ぬことはなかったって。
硫黄島の洞窟にある小さなベッドで亡くなったって・・・」
ひまわりは、あの一連の出来事はその一か月の出来事だったのかもしれないと、呆然と思った・・・
「あなたのおじい様は?」
急に聞かれて、ひまわりはしどろもどろで答えた。
「祖父も亡くなりました」
それ以上は、言えなかった。
「私は、戦争で散ってしまった兄のことを今でもよく思い出すの・・・
兄が生きていれば、どんな人生を送ったのだろうってね・・・
小さかった私の記憶の中の兄は、いつでも優しくて、笑ってたから・・・」
そう言うと、その女性は、ひまわりにハンカチを渡してくれた。
海人さんは、あなたたちを本当に愛していましたと、言いたかった・・・
いつでも、あなた達のことばかり心配していたと・・・



