あの夏に僕がここへ来た理由




「私の兄に、こんなに若い女性が会いに来てくれるなんて・・・

本当に、ありがとう」


その女性は、80歳位になるのだろうか・・・
それでもきびきびとお墓の回りに水を撒いたり、忙しそうに働いている。

ひまわりと海人は、後ろの方で静かに手を合わせた。


「私の兄はね、20歳という若さであの世へ行ってしまったの・・・

戦争で若い命がたくさん犠牲なったけれど、そんな一言では言い表せないくらいに私達家族にとっては、悲しい出来事だった」


ひまわりは、涙を堪えるのに必死だった。


「私の兄はね、本当に真面目で、いつも私達家族の事ばかり考えてた・・・
召集令状がきた時だって、自分の事より私達のことばかり・・・
まだ、小さかった私は、兄の事を困らせることばかり言ってた。

兄を悲しませてたことにも気づかずにね・・・」


私は、もうこぼれ落ちる涙を止めることはできなかった。
小さな海人の手を握りしめながら、黙って、その女性の話を聞いた。


「兄は戦争に行く前に、私と姉、そして母へそれぞれに手紙を残してくれた。

でも、自分がその戦争で死んでしまうなんて思ってもいなかったと思う・・・
必ず、帰って来るからって、何度も書いてあったくらいだから・・・」


ひまわりは、無意識の中でその女性に尋ねていた。



「海人さんは、どういうふうに亡くなったんでしょうか?」