あの夏に僕がここへ来た理由




町役場でバスを降り、ひまわり達はそこからタクシーでお墓の近くのお寺へ向かった。

そして、ひまわりと海人はお寺にあるベンチに腰掛け、持ってきたお弁当を広げてお昼ご飯にした。
ひまわりは、海人のために、動物の形をしたおにぎりを作ってきた。
食べることが大好きな海人は、あっという間にたいらげた。


「海ちゃん、ここからもうちょっと歩くけど大丈夫?」



「海ちゃん、歩くの大好きだもん」


飛び跳ねながら、ひまわりに抱きついてくる。


「分かった。
じゃ、出発進行~~~」


10年前、無我夢中で走ったこの道を、今は愛する息子と一緒に、笑顔でゆっくりと歩いた。


お盆明けということで、どこのお墓にも色鮮やかな花たちが飾られていた。
ひまわりは、すぐに木内家のお墓に辿り着いた。
そこは、綺麗に掃除がしてあり、お盆には誰かがお墓参りにきたことが見てとれた。

小さな海人は最初はたくさん並んでいるお墓にびっくりした様子だったが、ひまわりが海人を膝に乗せ、ここに眠っているもう一人の海人の話を絵本を読むように優しく話して聞かせていた。


すると、後ろの方で人の声がした。



「すみません、どちら様でしょうか?」