あの夏に僕がここへ来た理由




お寺に向かう途中、畑の中のあぜ道を通ると、海人がどこかで呼んでいるような気がした。
ひまわりは、この町に海人は住んでいたと不思議にそう確信した。

次に訪れたお寺は、こじんまりとしていてひっそりと建っていた。

人の気配もなく、ひまわりは途方に暮れてしまった。
しばらくそこで待っていたが誰一人見当たらず、ひまわりは諦めてお寺の入口の階段に腰掛けた。
これからどうしようかと地図を見ながら考えていると、畑仕事の恰好をしたおじいさんがお寺に入っていくのが見えた。

ひまわりはすぐに追いかけ、そのおじいさんに海人の事を聞いてみた。
よくよく聞いてみると、住職ではないけれどこのお寺に関わる仕事をしている人だった。


「木内さんかい?
この地域には、木内さんは一人しかいないからね。
でも、もう、今は誰もここには住んでいないよ。

だけど、お墓はこの先の墓地にあるからね。
お盆になったら、誰かしら墓参りにはきてるらしいよ」

お墓・・・・

ひまわりはその墓地の場所を教えてもらい、何も考えずにそこへ向かった。


このお寺で、海人は妹達と遊んでいた・・・
この辺りの畑で、お母さんと仕事に精を出していたのだろうか・・・


海人が見てきたはずのこの風景を、しっかりと胸に刻んでおこう・・・