私は今まで人を愛するということに臆病になっていた。
前に進む勇気がいつも持てなかった。

でも、海人に出逢って、海人を愛することによって、私の未知の扉が開いた気がする。

体裁ばかり気にしてきた私は、もうここにはいない・・・
海人のためなら、なんでもする・・・
何もかも捨てても構わない・・・



その夜は、久しぶりにこの家で、二人ははたくさん話をした。

これからの事、もっと先の未来の事・・・

そして、海人の口から過去へ戻るという言葉は、二度と出てくることはなかった。


「絶対に離さない・・・」


海人はひまわりを抱きしめて、何度もそう言った。


これほどまでに僕を惹きつけて離さないひまわりを、僕も、永遠に、何があっても離すもんか・・・


この先に訪れるかもしれない別れの予感を吹き飛ばすかのように、海人は心の中で何度もそうつぶやいた。


ひまわりはそんな海人の腕に包まれながら、いつの間にか静かに眠りについた。



そして、夜が明ける前に、海人はひまわりの祖父の自転車で民宿に帰って行った。