あの夏に僕がここへ来た理由




この日は早めに仕事を終えた海人は、サチに「買い物に行ってきます」と言って外へ出た。

夜が深まるとこの近辺は全く人通りがなく静まり返っている。
海人は電話ボックスに入り、くずしておいた百円玉を電話の上に置きひまわりに電話した。

すると、ひまわりは待っていたのかすぐに電話に出た。


「海人さん、早く仕事が終わったの?」


海人はひまわりの電話越しの声を初めて聞いた。


「そう、急いで仕事を済ませたんだ」


そう言うと、ひまわりは少し笑った。

ところがまだ多くも話していないのに、電話の料金はどんどん増えていく。


「海人さん、ごめんなさい。
公衆電話から携帯電話にかけるのって、すごくお金がかかるんだ・・・」


ひまわりは、すまなそうに海人にそう伝えた。