あの夏に僕がここへ来た理由




「う~ん、どうだろうね、聞かない方がいいかもしれないよ。

でも、記憶喪失ってところで、私はそういう人に今まで会ったことがないから、そういうもんなのかもしれないね~」


海人は一瞬ためらったが、思い切って聞いてみた。


「あなたはね、最初に見た時も、今も、何も見えないし何も感じないんだよ。

普通は後ろの方でガヤガヤ音がしたり、話し声が聞こえたりがするんだけどね。
なんだかね~、あなたは不思議なくらいに無なんだよ。

初めてだね、こういう人は・・・」



「あ~、そうなんですか・・・」


海人はそう答えるしかなかった。


「ま、私のこの力もあてにならないから気にすることはないさ」



「はい」


海人は気にしていない顔を装ってはいたが、心の中はかなり動揺していた。