玄関は開いていたので留守のはずはないと思い、海人はもう一度大きな声で呼んだ。
すると、奥の部屋から腰の曲がった白髪まじりの年老いた女性が出てきた。
「すみません、外のアルバイトの募集の紙を見て来ました」
「さっき、電話をもらった人かい?」
「はい、木内海人といいます」
その年配の女性は、海人の事をじろじろ見ている。
「上がりな」
その女性はそう言うと、海人を食堂の椅子に座るように促した。
「あの、すみません。
慌てて来たせいで、履歴書も何も持ってきてないんです。
それでも、大丈夫でしょうか?」
海人は、何度も頭を下げながら言った。



