夏を殺したクラムボン




ふと回想すると、この1ヶ月のどこかに、確かな違和感があった。



犬と猫を殺した犯人。小動物を殺した犯人。
浜田を殺した犯人。クラムボン。
釈然としない、なにか。



それはとても些細なことだったが、1度もたげた違和は心の内で膨らみ、周の耳に届く教室の音をかき消した。



……このクラスの人たちが言うクラムボンは、どちらの犯人のことを表しているのだろう。



浜田を殺した犯人が、クラムボンなのか。
動物を殺した犯人が、クラムボンなのか。



それとも、まさか。



ある1つの可能性が思い浮かび、周の心臓が大きく跳ねた。



……まさか、ね。



どこからともなく湧いた可能性を打ち消し、周は教科書の物語を読む成海に目を向ける。暑いなと沢田が呟き、カーテンの裾を成海に手渡した。



カーテンの裾は成海から浜田の後ろの席の男子に渡され、順番に引かれていく。黄色いカーテンに遮られた日光は、力を弱めながらも校舎の端の教室を照らした。




……成海は今、
何のことを考えているのだろう。



犯人のこと。窪田に殺された猫のこと。今、沢田がクラスメイトたちに出した質問のこと。



『メロスは、何のために走るのか』



動機があり、目的があって、行動がある。






6月末の、あの日のこと。
なぜ、あの日、
成海は私にあんなことを言ったのだろう。






『同じクラスの、成海 諒だけど』






体操服の白と青のコントラストが、鮮明に周の視界に焼きついている。白いシャープペンシルをルーズリーフの隣に置き、周は無意識下で頬杖をついた。