多少の罪悪感を抱えたまま、ルーズリーフの隣に置いたシャープペンシルを持ち上げる。すると、詩織がセーラー服の襟を掴み、3度引っ張った。
「ね、葉月さん」
「……なに?」
周の耳を寄せ、詩織は囁く。
「葉月さんってさ、成海のこと、好きでしょ?
かわいいし」
「え……私が?」
目を見開き、周は身を引いた。周の反応を見定め、詩織は言葉を紡ぐ。
「仲良さそうだよね」
「……成海のことはなんとも思ってない」
「ほんとに?」
詩織の視線に居心地の悪さを感じ、周は首を振って彼女の言葉を否定する。
心臓が、大きく高鳴った。
……違う。これは恋じゃない。
「……好きじゃない。たまに話すくらいで」
「そうなんだ……ふーん」
急いで前を向き、激しく脈打つ心臓を抑え込む。
……恋じゃない。恐怖でもない。
彼に引き込まれるような、この感情の名は?
いくら考えても答えは出ず、周は諦めて板書を丁寧に写した。
太陽がさんさんと窓際の成海の机に降りかかり、彼はシャツの胸元を仰ぎながら、うとましそうに窓外を見る。反射した木の温もりで、周の白い肌もじんわりと汗ばんだ。
……私に気づいてほしいこと。2人の犯人のことだろうか。
もしかして、成海はもう、
犯人を見抜いている?
白紙のルーズリーフを前に置き、周はシャープペンシルを指先で器用に回した。
……気になることがある。
どうして、今までずっと小動物を殺してきた犯人は最近姿を現さないのだろう。以前は1ヶ月に2、3匹が殺されていた。だけど7月に入ってから、新たに殺された動物の噂は聞かない。
教室でみんなが話していたのは、浜田を殺した“クラムボン”と呼ばれる正体不明の犯人と、今や消えつつある小動物殺しの犯人の噂。
クラムボンはわからないけど、小動物殺しの犯人は、多分このクラスに――。
……何かが、おかしい?
シャープペンシルを回す手を止め、周は白い天井を見上げた。



