夏を殺したクラムボン




窪田は両の拳を握り、唇を震わせる。



「……騙したのか。お前、課題忘れたって言ってただろ。……やっぱ、黒板の字を書いたのも成海だったのか?」

「そうだよ」

「はは……クズだな、お前」

「……否定はしないけど」



成海は今にも殴りかかられそうな窪田の視線を受けつつ、遠い夏空を仰ぐ。



「窪田のことを特定するのは、思っていたより難しくなかった。あの猫は、よく僕が通る通学路の空き地にいた猫だったから。

そして、その通学路を通る4組の人間は3人。そのうちの1人が、窪田だった」



窪田の眉がかすかに動く。



体内にこもる熱が2人の背中に汗を流した。



「確か昨日の1限目のあとに、窪田は『バッシュを忘れてケースだけ持ってきた』って言っていただろう。

それを聞いた時は特になにも思わなかったけど、よくよく考えたらそのケースは猫を持ち運ぶのにかなり都合のいい物だってことに気づいた」



淡々と言葉を並べていく成海とは対照的に、窪田は地面で仰向けに転がる蝉の死骸を見つめ、多量の汗を滴らせている。夕暮れの炎天下の公園は、立っているだけでめまいを起こしそうなほどの蒸し暑さだった。



「もし猫を入れたのが鞄の中だとしたら、どうしても形は崩れる。レジ袋やビニール袋に入れたら目立つ。体操服袋は容量的に無理だ。

でも、中身の入っていないバッシュケースなら、死んだ猫の1匹くらい余裕で入れられる」



蝉の声が、2人の体操服を揺らめかせる。