「今日も、成海の、勝ちか……」
膝で体を支え、窪田はそばで平然としている成海を悔しそうに見上げた。
「体力だけはあるから」
成海は校庭を見やり、ソフトボール部とテニス部の部活動がちょうど終わったことを悟る。校庭の端で輪になった2つの塊が見えた。
「……成海、帰ろうぜ」
「提出物、出し忘れたから先に帰ってて」
「へぇ……成海が忘れてたのか。珍しいな。じゃあな。オレ、もうちょい休んでから帰るわ」
「うん」
成海は体育館の前にリュックを取りに行き、人通りが少なく校門が見える場所で、罠を仕掛けた人物を待つ。
……猫を殺した犯人はあいつだ。あとを尾けていって、そいつが猫を殺した場所で待ち続けていれば決定的な証拠になるはず。
10分ほど柱の陰に身をひそめていると、成海の待っていた人影が校門を通過していった。気づかれないように細心の注意を払いながら、帰宅中の生徒たちの背後に身を隠し、人影を尾行する。
道端の電柱にすがる1匹の蝉が延々と鳴きわめいている。
人影はときどき振り返っては何かを探しているようだった。
生徒たちの姿がまばらになり、成海は30メートルほど距離を広げつつ建物の陰を辿る。



