隣の席に着き、黒板を見た周は訝しげに眉をひそめている。
「葉月でもなさそうだな、じゃあ、誰が……真木とか?でも、真木はもうちょい字が綺麗だし」
窪田はクラスメイトたちと同様にメッセージを書いた人物が気になるようで、しきりに教室のあちこちを見回している。
莉央はとうに教室に来ており、ひそひそと声を潜めて仲間内で話していた。ときおり成海と目が合うが、憎しみのこもった視線はすぐに逸らされる。
次に、成海は斜め後ろに座る詩織に目をやった。
詩織は我関せずといったふうに友達と話し、明るく笑っている。彼女の右手には赤ボールペンが握りしめられており、友達とペン回しの技術を競っているようだった。
成海はあくまでも無関係をよそおい、ある人物の様子を伺う。
8時25分頃、教室に全員が集まったのを見計らった1人の男子が黒板の前に立った。
「おい、全員これ読んだよな!沢田が来る前に消すぞ」
全員が読んだことを確認し、男子は手に取った黒板消しをゆっくりと黒板上で滑らせる。赤いチョークで書かれたメッセージは、水に侵食されるように滲んで消えていった。



