夏を殺したクラムボン




視界が白く霞んでいた。ゆるゆると焦点を合わせていくと、白いものは天井の壁だということがわかった。



つぅと何かが目の横を流れていった。反射的に拭った手のひらは、生温かい水に濡れた。



顔を持ち上げ、周りを見る。成海は固い保健室のベッドに寝転んでおり、四方を白いカーテンで仕切られていた。



背中が鈍く痛み、少しばかり頭痛がする。



ベッドに起き上がると、衣擦れの音を聞きつけたらしく、カーテンの隙間から眼鏡をかけた保健医が顔を出した。



彼女は1度顔をカーテンの中に戻すと、バインダーに挟んだ紙を持ってカーテンをくぐり、成海の足元に腰をおろす。



「目を覚ましたな、成海くん。気分はどうだ」

「気分?……僕は、なんで保健室に?」

「んー、沢田先生から聞いた話だと、女子生徒の指導中に気を失ったようだが」

「……あぁ」



失神する直前のことを思い出し、成海は息を漏らした。



「脳貧血だ。成海くん、持病はないね?」

「特に」

「で、倒れる前に怪我したりは?」

「してません」

「そうか。じゃあ、おそらく心理的要因によるものだと思うが……ストレスでも溜めてるのか?」

「……別に」



成海は視線を白い掛け布団の上に移動させ、淡々と質問に答えた。



「朝ごはんは何を食べた?」

「……6枚切りの食パンを、1枚」

「少ないな。私なんか4枚切りの食パンを2枚だぞ。今日だけか?」

「毎日、ですけど」

「中2男子にしては極端に少なすぎる。体力もたないぞ」



保健医は大げさにため息をつき、紙に何かを書き込んでいる。