夏を殺したクラムボン




走馬灯の中を走り、半年後の風景が夢に浮かび上がる。



玄関の戸口に立ち、成海のことを興味深く観察するように見つめる女性がいた。



『このこがおれのむすこだよ。まことっていうんだ』



父の手が成海の背中に添えられる。



『へぇー……すごくかわいいのね。あなたそっくりだわ』

『そうか?ははおやにだとよくいわれるが』

『こんにちは、まことくん』



女性はにこやかに腰を曲げ、成海に桃色のマニキュアを塗った右手を伸ばす。



『あたしは、……っていうの。これからいっしょにすむことになるけど、ほんとうのおかあさんだとおもってくれていいからね』



成海は微動だにせず、ぼんやりと彼女の手を眺めた。



彼女は手を引っ込め、気まずそうに笑う。



『やっぱりいきなりはむりだよねえ……』



玄関には、冷気が漂っていた。外は雪が降っていたらしく、彼女のセミロングの髪には白い結晶がいくつも乗っていた。



『ちゃんとあいさつしなさい』



父が肩を軽く叩く。



『……こんにちは。おれ……』

『まこと、おしえただろう。あいさつのときは、“おれ”じゃなくて“ぼく”だ』

『……ぼくは、なるみ まこと、です』



女性は満足げに成海に微笑みを向け、再び成海の前に手を差し伸べた。



『ちょっとずつ、なかよくしていこうね』



成海は女性の手を握り、視線を移した。



コートをまとう彼女の腹は、心なしか膨らんでいるように見えた。