「文字を書いたのはお前だけか?」
沢田は腕を組み、真剣な声音で言った。
「……違う。でも、言わない」
「……そうか。なんで……いや、猫を入れたのもお前なのか?」
「それは、絶対やってない、あたしは……あいつが……を、ころ……から」
「聞こえる声で言え」
2人のやり取りをぼうと聞き流し、成海が考えていたのは別のことだった。
……犯人はどうやって、あの猫を教室に運んだんだろう。
さりげなく口元に手を当て、成海は思考を凝らす。
……あの猫は夏なのにどこも腐ってなかったし、血だって固まってはいなかった。
夜に殺されたなら涼しいから腐ることはないだろうけど、血はそんなに乾いていなかったから殺されたのは朝……通学途中、か。
視線を莉央の決まりの悪そうな横顔に送り、彼は口元から手を離す。
……死骸を何かに入れるなら、血が滴るから穴が開いていない入れ物で、防水性がなければいけない。レジ袋でもいい。
でもレジ袋やビニール袋で死骸を持ち歩いていると、かなり目立つ。ビニール袋やレジ袋で死骸を包んだ後に、何か別の入れ物に入れる。
鞄に入れればわからない……でも、鞄には基本教科書や筆箱が入っているから、もっと猫の形が崩れているはず。
そういえば……。
成海が目を伏せたとき、外からアブラゼミの鳴き声が聞こえた。



