成海と莉央は鞄を教室に置き、数メートル離れたまま無言で第二理科室に行く。
ふと成海は背後を確認するが、そこには俯いて歩く莉央の姿しかなく、周を見受けることはできなかった。西日は廊下の窓から差し、生徒たちの影を床に映し出している。
第二理科室はすでに鍵が開いていた。
成海はためらいなく扉を開け、辺りに一瞥を投げる。窓際の試験管は光を受け、煌めいている。
窓際の試験管を間近で眺めていると、床と木の椅子がこすれ合い、耳障りな音を立てた。
莉央は椅子に腰を下ろし、忌々しげに成海の背中を凝視している。
「ムカつく……」
莉央が成海にも聞こえるような音量でひとりごちた。濁った感情が、第二理科室に拡散される。
「なにが?」
窓から見える日に焼けた地面を見下ろし、成海は冷静に問うた。
「……成海が葉月を庇ってること。意味わかんない。なんで?」
「全員、葉月を……」
「じゃあなんで庇うの!?成海もさ……浜田と、仲、良かったくせに」
「浜田は……」
「動物を殺してるのも……っ、浜田を殺したのも葉月なのに!」
「違う」
成海は莉央の目を睨み、言い切った。
「浜田を殺したのは、葉月じゃない」
逆光で成海の体に影がかかる。
反射的に、莉央の腕に鳥肌が立った。



