2人が西階段へと歩んでいった景色が脳裏をよぎるが、周は黙って黒板の白いモヤを見ていた。
「珍しいな。何してんだあいつら、内申が下がるってのに……しょうがない。さて、道徳するぞ」
沢田はため息をつき、頭を掻くと授業を始めた。
さりげなく、周は机の中を覗き込む。机の中は空っぽで、ほんのりと生臭い血の匂いがにじんでいるだけだった。
成海が教室に帰ってきたのは2限目後の休み時間のことだった。彼はぼうと感情無く虚空を眺めており、話しかけるのは憚られた。
授業にときおり、脳内に鮮明に記憶された猫の死骸や赤い手、女子に囲まれた時の感情の高まりが蘇り、衝動的な吐き気が背筋にほとばしる。
4限目の途中、数学の教師が言った。
「あと3日でお待ちかねの夏休みだな」
真夏日のかげろうが校庭で踊り、プールのそばの庭で、樺の葉が生き生きと陽を浴びている。



