白い便器についたくすんだ汚れが吐き気を助長させ、周は胃の中の物を戻す。しかし溢れるのは胃液ばかりで、喉元が焼けるように痛んだ。口の中に、苦味が広がる。
幾度となくむせ、数分が過ぎ、ようやく嘔吐がおさまった。
嘔吐物を流した周は息を整えつつ個室から抜け、口の中をゆすぐ。真夏のコンクリートの上を裸足で歩いているような、じりじりとした喉の痛みが続く。
再び、チャイムが校舎に響いた。
気分も悪く女子トイレをあとにし、ふと先ほど詩織が向かっていった方向に視線を投げると、見覚えのある後ろ姿を見つける。
成海と思わしき影。彼はどうやら、西階段を目指しているようだった。
……何をしてるんだろう。
階段のある曲がり角で後ろ姿が消える。気にはなったものの、周は目を逸らし、教室に向かった。
扉を開くと、クラスメイトたちの好奇の目が彼女を刺した。
沢田が周に気づき、声をかける。
「葉月か。……もう大丈夫か?」
「……はい」
「そうか。じゃあ席に……そういえば、誰か、成海と河野を知らないか?」
周が席に着き、生徒2人の姿が見えないことに気がいった沢田は全員に問いかけた。



