1限目終了のチャイムが鳴り、ようやく感情が落ち着いた周は第二理科室を出た。
他クラスの生徒たちは周のことなど気にもせず休み時間を堪能しているが、すれ違う2年4組のクラスメイトたちは周を避けていく。居心地の悪さを感じながらも、周は顔でも洗おうと女子トイレに足を進めた。
鏡に映る自身の顔はひどく、目は腫れあがり、普段の端麗な面差しは見る影もない。
顔を洗い終わり、スカートのポケットに手を入れるとハンカチが手に触れる。取り出した青いハンカチは、朝、猫の血を流したあとに拭った水で濡れていた。
ハンカチで顔を拭いた後も、前髪から水が滴り落ちる。周は手早く前髪の水分を拭き取り、女子トイレから出た。
瞬間、眼前を詩織が横切り、周の腕に詩織の肩がぶつかった。詩織はそれに気づかない様子で、教室とは反対の方向へ歩いていく。
唐突に今朝の猫の暗闇に染まった眼窩が眼前に投影された。
こちらを見る焦点の合わない目。飛び出した内臓、血に浸かった文庫本、くらりと揺れる視界――赤い。
「……うっ」
急速に吐き気がこみ上げ、周は女子トイレの個室に駆け込んだ。



