夏を殺したクラムボン




成海は教師の目を盗み、西階段の段差に足をかけた。踊り場の壁から差す陽光が白い床を眩しく照らしている。窓ぶちに転がるセミの死骸。



足音がひとつ響くだけの悄然とした階段に既視感を覚え、成海は踊り場で立ち止まる。



……あれは確か、葉月と朝の教室で待ち合わせたときだったか。



階段を登っていくと、屋上の前の空間に着く。そこでは先に来ていた詩織が扉にもたれ、足を伸ばして座っていた。



彼女のスカートは太もも上部までめくれ上がり、白と紺の対比を強く際立たせている。



「あ、来たんだ」



成海は無言で詩織から1メートルほど離れた場所に座り、片足を伸ばした。



詩織は髪に手ぐしを通しつつ、



「2人きりだね。……葉月さんもいないし」



と呟く。



「訊きたいことがある」



冷然とした目を詩織に向け、成海は淡々と問い尋ねた。



「朝、葉月の机に猫を入れたのは河野か?」

「え?……話って、それだけ?」

「他に話すこともないけど」

「なんで?」

「なんで、って……」



詩織は口を尖らせ、ゆらりと体を起こし、成海の前に立つ。小柄な影が成海にかかり、彼は冷めた表情で彼女の顔を見た。



「二択クイズね」



詩織はしゃがみ、人差し指を立てる。



「あの猫はあたしが殺した。マルかバツか。成海はどっちだと思う?」

「……バツ。答えは?」

「あはは、教えない。ね、それより……」



体をずいと近づけ、詩織は首をかしげた。