成海と詩織は扉の前で向かい合う。
「成海、もちろんここでも良いんだけど……見られてるの嫌だし、どっか行かない?次、道徳らしいからさぼっても問題ないよ」
成海がさりげなく教室を見回すと、数十の視線が自分に集まっていた。見られている、疑われているという感覚に全身が鳥肌立つ。
興味のない生徒もいる。眠る生徒もいる。しかし、殆どのクラスメイトたちは成海の一挙一動を監視しているようだった。
ばちち、と電撃が走ったような音が窓から鳴り、ガラスに当たったクマゼミが羽ばたきながら落下していく。
「ばらばらに出ようか。屋上前の西階段は絶対先生来ないからそこで」
「別に、そんなに大したことじゃない。ただ訊きたいことが……」
「あたしにとっては大したことなの。じゃ、先に行っとくから……来てね?」
詩織は嬉しそうに微笑み、スカートを翻した。
成海は顔をこわばらせ彼女が消えた廊下を目視していたが、やがて諦めたように肩を落とし、西階段へと足を運ぶ。
ポケットに手を突っ込んだ瞬間、電子音のチャイムが鳴った。目の前を走り抜ける生徒たちを避けながら、彼は薄っすらと笑った。



