夏を殺したクラムボン




冷たい視線の先にいたのは、河野 詩織だった。前方の扉にクラスメイトの女子としなだれかかり、成海と目が合うと二重の目をやや見開いて笑った。



血色の良い、あかい唇が動く。





――好きだよ





「成海?なに見てんだ」



窪田が成海に習い詩織を見ると、彼女はふいとそっぽを向き、クラスメイトと話し始める。窪田はしばし詩織の様子を伺い、腕を組んだ。



「河野、なんか最近 変じゃね?なんていうか……朝も、言葉に棘があったっていうか……まぁそんなもんかもしれないけど」

「……ちょうどいいか」



成海は無表情で立ち上がり、詩織に歩み寄っていった。



「え、おい、成海」



窪田は成海の席の前でうろたえ、悩ましい顔をして自身の席に戻っていく。



詩織の前に立つと、彼女は目を輝かせる。彼女の幸せそうな表情とは対照的に、隣に立つクラスメイトは顔を引きつらせた。



「河野に話がある」

「あ……成海じゃん……なに、どうかした?」



クラスメイトは歯切れ悪く言葉を紡ぎ、詩織のスカートを引っ張る。



しかし彼女は笑顔を崩さないまま煩わしそうにクラスメイトの手を離し、



「ちょっと個人的な話だからさ、あっち行っててくれない?」



と教室の後方を指差した。



「え?でも」

「いいから」

「……わかった」



クラスメイトは不服の面持ちをしながらも、後方の友達の輪へと向かっていった。