葉月 周は、笑わない少女だった。
両親にもともと親戚はおらず、出産と同時に母親は亡くなり、彼女と血の繋がった人間は暴力的な父親だけだった。
虐待は日ごとに繰り返されていた。殴る、蹴るといった暴力は軽い方で、父親の気分によって煙草の先を体に押し付けられることもあれば、ベルトで何度も叩かれることもあった。
父親がいつも狙うのは、周の腹だけだった。他者に気づかれないようにするためか、それとも単なる彼の嗜好なのか。
ベルトを振るうたび、煙草をもみ消すたび、彼は彼女に特定の言葉を投げ続けた。
『お前が生まれたせいで、……は死んだ。
……を殺したのは、お前なんだ』
『ごめんなさい、ごめんなさい、
お父さん。
私が悪いんです。私が全部悪いんです。
ごめんなさい、ごめんなさい……』
彼女はいつでも泣いていた。泣かなければ精神が崩壊してしまっていた。あるいは、もうすでに壊れていたのかもしれない。
小学校高学年の頃、またいつものように家内で暴れていた父親が彼女の目の前で倒れた。それはあまりに突然のことで、彼女はしばらく部屋の隅から動くことができなかった。
数時間後、我に返った彼女は電話に飛びつき、救急車を呼んだ。しかし彼女の父親は助からなかった。
心臓発作を起こし、心肺停止。一人娘を残し、彼は46歳の人生を閉じた。



