試験管の隣から飛び降りた成海は、近くの窓を開け放した。ざらついた生ぬるい風が緩やかに第二理科室に吹き込み、湿りきった空気を乱す。
窓外の景色は、青い。
「2年4組にいて、あの道を通る人間は、窪田、河野、真木だけ」
「……え」
周が、涙に濡れた顔をもたげる。
「それ、って……」
「可能性が高いのはって話だし、誰がやったって証拠もない。犯人を絞るのも難しいから」
窓を閉め、成海は振り向いた。
「僕は教室に戻る。葉月は?」
扉へと歩みを進めつつ成海は言った。
「……もうしばらく、ここにいる」
周は顔を見られないよう、髪で端正な顔立ちを覆い答える。へぇ、と短く返事をし、成海は第二理科室から姿を消した。
薄暗い部屋に、周はひとり、残される。
「……葉月 周。真木 莉央。
河野 詩織。窪田 和樹。
そして、成海 諒」
椅子から腰を浮かし、彼女はささめいた。
……浜田 優一、バラバラの小動物の死骸。
真木 莉央の言う通りだとすれば、悪いのは全て、私なのだろうか。
周は“あの日”の成海の言葉を想起し、赤く腫れた目で天井を仰ぐ。
『……確か、葉月 周だっけ』
『猫好きなんだ。僕も猫の方が好きだな。犬よりも身近だから見つけやすいし』
『じゃあ、僕が力になる。
だから、明日から、葉月は……』
先ほどまで成海が居た場所に立ち、遠い入道雲の頂点を追う。



