厚い雲が晴れたのか、燃えるような陽光が街を照らし出す。
「……影」
周は消え入りそうな声でひとりごち、長い机に顔を伏せた。
成海は椅子をきしませて立ち上がり、ふらふらと棚の中に入れられたフラスコや電流計、光の反射を観察するためのスクリーンなどを見回り始める。
窓ぎわに置かれた試験管が、窓の外の景色を二重に映し出している。
「……葉月、今回の件で確定した」
周に背を向け、成海は試験管を持ち上げた。
「犯人は2年4組にいて……マルチーズやあの猫を殺したことを葉月になすりつけようとした。3人、目星がついてる」
試験管同士が触れ、涼やかなガラスの音が第二理科室にあまねいた。試験管を通して映し出される風景は、指で押し潰されたように湾曲している。
「僕はあの猫を知ってる。残っていた方の目は青で、他の猫に比べて尾が短い。あの猫は通学路の途中の空き地に居た猫だ。そして、僕の家は遠いからあの道を通る人も少ない」
「……成海」
掠れた声に成海は口を閉ざし、そちらを見た。
周は机に伏せたまま動かない。
「……私のお腹、成海も見たでしょ。あの日の約束もそう。なんで成海は私と話せるの」
顎に手を当て、成海は試験管の隣の空いたスペースに座り虚空を見つめた。しばらく視線を泳がせ、成海は数メートル離れた周の後ろ姿に目を向ける。
周の背は、小さくか細い。
「……別に、大した理由はない。ただ、葉月なら気づくかな、と思っただけ」
「何に?」
「……まぁ、まだ気づいていないようだけど」
さっきの話に戻るよ、と成海は顔を背けた。



