夏を殺したクラムボン




「なんだって?」

「……クラムボンって本当は、いったい何だったんですか」



目を合わせようとはせず、周は机の下で両手を握りしめた。沢田は当惑し、考え込むようなそぶりを見せ、顎に手を当てる。



「……諸説ある。成海だったか、人間っていう解釈も中学校以上だと良くあるし、真木が言っていたプランクトンという説もな。もっといけば、解釈してはいけない、という説だってある」



成海は青い机にかかる自身の影に触れている。



「窪田や河野が言っていた泡や波ってのも有名だ。それと同じで……浜田が言っていた、魚もな。まぁ、それらはあまり支持されていない説だが」



1限目の始まるチャイムが鳴り、沢田は腕時計に視線を落とす。



「かわせみってのも、支持されていない。泡や波などの解釈を否定するのには、それなりの理由がある。泡や波なんかは、子蟹が擬人法を使うか?という観点から見て、おかしいだろ、って」



太陽に雲がかかったのか、窓から望める景色から光が消え、第二理科室は暗い色に染められた。



「俺個人としては、クラムボンは
 子蟹たちの影だと思っている。

 蟹の子たちは
 影を見て遊んでいるんだと、な」



それだけを言い残し、沢田は去っていった。