沢田は後ろ手に扉を閉め、鍵をかけた。
「じゃあ、話を聞かせてもらおうか。……何か話すことはあるか?」
長い実験用の机を挟んだ3人は、丸いパイプ椅子に腰掛けた。沢田は目の前の2人の生徒を見比べ、どちらかが話し始めるのを待つ。
先ほどの迫力はもう無くしたようで、成海はいつも通りに怠そうな目を伏せていた。
途中で御手洗にでも寄ったのか、周の手は白い肌色に変わっている。
第二理科室は校舎の北側、決して陽の当たらない場所にあるため、教室に比べれば格段に涼しかった。
「状況説明だけでもいい。知っていることだけで良いんだ。成海、葉月、なにか話すことは?」
呼び出された2人はだんまりを貫き、ぼんやりと地面に顔を落としている。
仄暗い場の雰囲気に耐えかねた沢田は右手で両のこめかみを押し、重い声色で言った。
「……率直に訊く。猫を机の中に入れたのは、お前らのうち、どちらかなのか?」
「違う」
成海は即座に沢田の言葉を否定し、顔を上げて天井を仰いだ。その隣で周は涙に濡れた目を沢田に向け、唇を固く結んでいる。
「何がどう違うんだ?」
沢田の追及に対し、成海はまた黙り込んだ。
「……話しづらいことなのはわかる。でも、話してくれないと俺は何もわからない。葉月はいじめられているのか?」
周は放漫に首を横に振り、引き締めていた唇を緩めた。
「……先生」
「ん?」
「きっと、私が、」
顔を上げ、周は悲痛な表情で言う。
「私が悪いんです。
ごめんなさい、ごめんなさい、
ごめんなさい、ごめんなさい……」



