懇願は続く。
「浜田のお葬式が終わったのは昨日だし、不謹慎かもしれない。でも……」
「……」
「なんで黙るの?お願い……ずっと一緒にいる訳じゃないし、絶対に迷惑はかけないから」
……なんで。なんなんだよ。
何がいけない?
成海が押し黙っていると、詩織は切羽詰まった表情で腕を引っ張った。
「返事してよ」
……違う。そんなことじゃない。
校庭に面する校舎から吹奏楽部の美しい演奏が鳴り始める。
成海は冷めた目で詩織のことを見下げ、重い溜息を吐き、手を払った。
詩織は明らかに傷ついた表情で目に涙をため、15センチほど背の高い成海を見上げる。黒い水筒を拾い上げ、成海は表面についた砂を払いながら足早に元来た道を辿った。
詩織は口角を上げ、少しずつ遠ざかる成海の後ろ姿を見送っていた。



