「成海」
周はすぐに足音に気づき、振り返って成海と目を合わせた。
「1つ訊きたいんだ」
「なに?」
周は無表情だったが、いつになく上機嫌に言葉を返し、1つに束ねた艶やかな髪を揺らした。
成海は真っ直ぐに周の目を見据え、声を発する。
「葉月は、浜田が死ぬのを見た?」
「え?」
驚いた素振りを見せ、周は一瞬動きを止めた。
「知らない。なんで?」
「……本当に?」
「当たり前。なんで私が浜田が殺されるところを見るの?」
成海は周の質問を無視し、重い雰囲気を漂わせるクラスメイトたちに視線を向けた。
……じゃあ、どうして。どうして、みんな。
理由もなく、葉月を疑うんだ?
「なんで不思議そうな顔してるの。もしかして、成海も私のことを疑ってるの?」
周が抑揚のない澄んだ声で言った。
「いいや。全く」
成海は周に向き直り、首を振る。周は探るように彼の黒い瞳を覗き込み、成海にしか聞こえない声量で囁いた。
「ねえ、成海。犯人、探さない?」
「……葉月も?」
成海は目を泳がせ、くるりと踵を返し言う。
「外で話そう。あんまり、ここに居たくない」
「別にいいけど」
出入り口に向かい、二人は距離をおいて歩を進める。
扉を開けると涼やかな風が流れ込み、葬儀場内のこもった空気を乱した。



