夏を殺したクラムボン




周は絶句し、うつむいた。



右の手の甲を眺め、成海は思考する。



……僕はどうして葉月ではなく、浜田を殺したのか。6月29日に葉月が死にたいと言っていたから、利害一致の関係で約束をしたはずなのに。



昔、何かのミステリーで読んだことがある。
殺したいのに殺せない。



愛。恐怖。良心?
違う、そんなものじゃない。



幾つかの推理小説のタイトルが、輪郭をぼかして脳内を横切っていった。



……葉月のことは、中1の頃から知っていた。なんとなく、気になったから。



周が顔を上げ、弱々しく言葉を紡ぐ。



「……じゃあ、なんで猫が殺された日、成海は怒っていたの?」

「僕が犯していない罪を、許可もなく押しつけられそうになったから。真木と模倣犯に腹が立っただけ」



成海はガラスの破片を拾い上げ、南の空に昇る太陽にかざした。目の中に屈折した光が飛び込み、鮮やかな残像を残す。



「……結局、僕が窪田の分まで罪を被っても、葉月以外は誰も気づかなかったけど。なんで葉月は気づいた?」



周はスカートのポケットに手を入れ、赤い柄の凶器を無言で取り出し、成海の前に掲げた。



成海はそれを眉を潜めて見ていたが、やがて息を漏らし、虚空に視線を浮かべる。



「……昨日、見てたのか」

「これ、河野さんのカッターよね」



周は収まっていた刃を伸ばし、切っ先に目を向けた。銀色の光が反射し、小さな平行四辺形を天井に映し出す。



成海は無意識に喉元に触れた。