鋭い音が空気と共鳴し、教室に鳴り渡る。ガラスの花瓶が千々に割れ、陽の光に反射して瞳孔の裏に焼きつく。
中に入っていた水は辺りに散らばり、成海のズボンの裾を濡らした。
残響で体が震える。遠い廊下から、駆けてくるような騒々しい足音が近づいてくる。
彼は白百合の茎を握りしめ、歯ぎしりをして花瓶に目を落とした。
勢いよく扉が開く。
残っていた冷気が“彼女”の髪をなびかせる。長く垂らされた黒髪は白い肌を縁取り、端正な顔を際立たせている。
「……成海、それ、なに?」
成海は無表情で彼女に目をやり、ふっと息を吐くと全身の力を抜いた。緊張の糸が張り詰める。彼女は大きく肩を上下させ、成海の持つ白百合を見て目を泳がせる。
「……葉月か。もう帰ったかと思った」
荒い息遣いが聞こえる。周は扉にもたれかかり、成海と浜田の席を交互に見比べた。
「さっきの、音、は?」
「浜田の花瓶を割った」
「割った?……落とした、の?」
「いいや。わざと投げたんだ」
「なんで?ねえ、成海はなにを……」
「葉月はもう、気づいているんだろう?」
周の声を遮り、成海は低く笑う。
彼女は視線を落として唇を噛んでいたが、やがて顔を上げ、真っ直ぐに成海の目を見つめた。
静寂が騒ぐ。
静止する空気が揺らぐ。
気だるげな緊張感の中、周は口を開く。
「クラムボンは本当に……
成海、なの?」
「……そうだよ。
僕が、浜田を殺した」
対峙する、成海 諒と葉月 周。
成海は口角を上げた。



