夏を殺したクラムボン




莉央の号令に合わせ、クラスメイトたちはばらつきながらも頭を下げる。一礼のあと、クラスメイトたちが一斉に扉に押しかけるのを横目に、成海は再び席に腰掛けた。



登校最終日の教室に、夏の気配が漂っている。



徐々に喧騒が失せていくのを感じつつ、成海は一度あくびをした。廊下のかまびすしい人混みも、時間が経つにつれて少なくなっていく。



笑い声の余韻と、ガラス越しの影。



まだ数人が残っている教室で、成海は背後の机に活けられた白百合を見やった。献花は浜田が死んだ日から絶え間なく置かれている。



花瓶に溜まった水が日光の黄金(きん)を受け、夢のように光り輝いている。



……浜田が今、生きていたら、僕はいったい何をしていただろう。浜田が今、生きていたら、誰が代わりに死んだのか。



葉月か、河野か、窪田か、真木か。
それとも、僕か。



数人が出て行き、成海だけが教室に残った。来ないのか、とひとりごち、リュックを置いて黒板に歩み寄る。一学期の様々な出来事が思い起こされ、成海は無意識に手のひらを見た。



窓際に目を戻すと、花瓶に反射した光がやけに眩しく感じられた。成海は唇を固く結び、浜田の机の前に立つ。



笑顔で帰路につく生徒たちの姿が窓下に映る。そこから、1つの影が校舎内に入っていくのが確認できた。



成海は花瓶の口を掴み、白百合の花を抜く。









そうして彼は、
力任せに花瓶を床に叩きつけた。