夏を殺したクラムボン




「……はい、目を開けて。着席」



長い長い1分間が経ち、体育館に生徒たちの囁きが戻った。



生徒指導担当の教師が細やかな注意ごとを呼びかけ、クラブ表彰のち、終業式が終わる。



「2年生から順番に、各自速やかに教室に戻りなさい」



左右からくる同級生たちに圧迫されながら、成海は校舎の端の教室へ歩を進めた。



いつになく、時間の経過は緩やかだった。








【今日の放課後、教室で】








真夏のかげろうに囲まれ、蝉が鳴いている。



成海は席に座ると机に肘をつき、教室の扉に注意を向けた。その人物は冷房の冷気に顔を輝かせる生徒たちに紛れながら、ゆっくりと教室に入ってくる。



蝉の声が止んだ。



「泊まりたい!」

「サッカーの試合がさ……」

「毎日部活なんだけどー、まじサイアク」

「なぁ、結局、クラムボンって誰だと思う?」



思い思いの言葉を口にし、クラスメイトたちは沢田がやってくるのを待つ。成海の机は強い日差しに熱されており、高い表面温度を保っていた。



気だるく窓外の風景を眺望する。昨夕、喉にできた小さな傷がうずいた。



周はブックカバーがかけられた小説を手に、文字を追うことに集中している。耳にかけた長い髪が冷房の風にふわついた。



詩織は髪を櫛で梳きつつ、傷だらけの机に視線を落としている。開け広げられた筆箱の中から、赤いカッターナイフは消えていた。



窪田はシューズケースを眼前に置き、一心にそれを見つめている。机上で握り締められた手は震えていた。



莉央は後頭部で1つに束ねた髪を外し、左右の肩に流している。彼女の目は、寂しげに窓際の2列目の席に向けられていた。



浜田の席に飾られた白百合は、
陽をうけて純白の光を反射している。



沢田が教卓に進んでいく。



昼までホームルームは続き、放課後は、すぐそこにまで迫っていた。