肩からずり落ちたリュックを背負い直し、背中についた汚れを叩きつつ、成海はこともなげに過去を晒していく。
「母親の浮気が原因で離婚。その半年後に新しい母親が家に来て、また半年後に弟の誕生。今じゃ父親も弟を溺愛してるし、ここまできたら他人も同然だと思うけど」
「……愛されていないの?」
「まぁ、殆ど忘れられてると思う。元の母親とよく顔が似てるらしいから、あんまり思い出したくないんだろうね」
成海は平然と言ってのけ、
周を見やり、静かに笑った。
「親の浮気も離婚も、顔が母親に似てるのも、
なにも僕のせいじゃないから」
周にとって、成海の笑う顔を見るのは初めてのことだった。
「僕が悪いなんてことは何一つないんだから、
僕が気にする必要もないんだ」
度重なる虐待。振るわれるベルト。
冷たい床に転がり、泣きわめく少女。
無責任な大人たち。夜の騒音。
ベッドで体を丸め、耳を塞ぐ少女。
閉じた瞼の奥に熱が生まれ、喉の奥が締め付けられるような息苦しさを感じる。
成海は目を逸らし、穏やかな笑みを消す。
「養子だって聞いたけど、それも、
葉月が悪い訳じゃないだろうし、さ」
……私は悪くないの?
緩く開かれた周の目から、
透明な涙がこぼれ落ちた。



