「お父さんの仕事、場所うつることになったの。


東京のほうに転勤
お父さん、部長に昇格したの
それでね」



ゆっくり母さんは話した。


この続きの言葉なんて分かってる


…聞きたくない


「俺たちはどうなんの?」




母さんはただ寂しそうな笑顔をうかべて


「東京に引っ越す」







「…俺はいかない」




頭が追いつかない、

いくらなんでも急だろ


「うん、あんたたちの気持ちはよくわかる


でもね、単身赴任なんてしたくない。

家族みんなで一緒に暮らしたい、これだけは譲れないの

時間はまだあるから考えてほしい」








「もし、行かないって言ったら?」






「蓮と淋、どちらかでも行きたくないならお母さんはあなたたちの気持ちを優先したいの




だからお父さんもここでやっていくよ」




「分かった」




父さんの昇格と、自分の大事な人達、

選べるはずなんてない