「杏子?どうした?」
「え?あ、なに?」
「何か元気ないなと思って。俺の勘違い?」
「そんなふうに見えたら彗先輩の勘違いだよ。」
今の不安なんてそのうちなくなる。
誰にも言えないから自分で解決しなきゃ。
歌ってストレス発散しよ。
「ん、これ。俺の番号。瑛人の事とかで何かあったら連絡して」
彗先輩から電話番号とLINEのIDが書かれたメモを渡された。
「え、知ってるの?」
「なんとなーくね。見てたら分かる。」
彗先輩には何でもお見通しなのか。
「瑛人はあんなんだからさ。傷つく女子も多いわけよ。杏子は今まで瑛人が付き合った子たちとは違うタイプだから何か心配で。」
すごく瑛人先輩のこと理解してるんだなこの人は。
「ありがとう。連絡しなくていいように頑張る。さ!歌お」
ちょうど私が入れた曲の順番になったのでマイクを持って歌う。
歌うことは嫌いじゃない。むしろ大好き。
「…頑張らなくていいのに。杏子は。」
そんな彗先輩の言葉は歌に夢中の私には聞こえていない。



