弱虫男子

扉を閉める前に目に付いたのは

クローゼットで浮いている

水玉のシャツだった。



誉めてもらいたくて

ちょっと派手なのを

買ってしまったから、


他の服と折り合いが悪くて

活躍の場がない。



なぜかこみ上げてくる怒りを

ぶつける場所が見つからず、


音をたてて扉を閉めた。




部屋を出るときには

スイッチを切り替える。



いつもと同じように

したはずなのに

今朝は洗面所についても

うまく自分を誤魔化せる気がしなかった。