───春だ
桜達が風に吹かれ、ひらひらと宙を舞い踊っている
その姿は、花の精霊達が新入生を歓迎し、踊っている…………
一旦思考回路を停止させ、ふるふると頭を回しながら、今までの妄想を振り払う
この歳になって、まだ中二病じみた事を考えるなんて……
思わず自嘲してしまう
「……ろう……真太郎!!」
その怒気を含んだ声で名前を呼ばれ、はっと意識を現実へと戻した
「あ、はいっ!!」
「窓の外見てないで集中しなさい」
「すみませんっ!!」
いつものように顧問である泉生沙美(イズミ イサミ)先生に注意をされた
泉先生は時に厳しく、時に優しい、人望の厚い先生で、
もう何年もこの高校の吹奏楽部の顧問をやっているという
……よし、集中しよう
今日はこの公立高校の入学式
俺が所属する吹奏楽部は、毎年入退場の演奏を任されている
もうすぐ入学式が始まるため、今は体育館で練習をしているのだ