【次は、歌を歌っていただきます。

サイオンジ、その場でアイドルの歌を完璧に歌え】

これが・・・課題?

名指しということは、鶫には違う課題が出されるということ・・・?

とりあえず、歌わなきゃ。


♪君のぬくもりを いますぐ感じたいと

♪愛する君の元へ いますぐ戻りたいと

♪そう思ったのにーーー 君はもうーーー

♪ここにはいないから


自分でも、歌は上手いほうだと思う。

自画自賛をしながら歌う。

なんて滑稽なんだろう。

苦しくて、歌う声が止まりそうになる。

だめ、止まっちゃだめーーー。

声を振り絞り、歌う。

もうすぐ、歌が終わる。噛んじゃだめ。
止まっちゃだめ。

【サイオンジ、クリア。次、ツルミ】

ふうっと息を吐く。

隣を見ると、鶫はガタガタと震えていた。


どうしたんだ?

「あ・・・わた、し、JPOP・・・音楽、知らないから・・・。

覚えてない・・・ど、うしよ・・・」

その言葉に、私の口角は自然とつり上がった。

しばらく、鶫はその場に立ち尽くし、震えていた。

【ツルミ、時間切れ。サイオンジの勝利】

〈ヤッタァ!マタ、サイオンジガカッタ!〉

また、女の子の声が・・・。

私を応援してくれているのかな?


ーーーそこで私はーーー。


気付いてはいけないことに気付いてしまった。

《鶫に課題が出されてないじゃないか》

なのに、鶫は負けになった・・・。

これは、意図的に2:2になるように、最終決戦まで決着がつかないように、仕組まれたゲームだったんだーーー。