『実はさ……恵斗の女癖の悪さを心配してたんだよね』

えっ!?
阿部さんの言葉に驚いたけど
納得した部分もあるので複雑な気持ちになってくる。
だからあんな風にからかってきたのか……。

『希美姉さんが何を考えているか分からないから
余計心配になっちゃって……ほら、アイツ。
恵斗は、俺なんかよりカッコいいだろ?だから 
千奈美さんも……恵斗に言い寄られて
惹かれたらどうしょうとか考えちゃって……』

『我慢出来なくて……電話しちゃったんだ。
ごめん……考え方が女々しくて』
情けないように謝ってくる阿部さん。

私は、その言葉を聞いた時、何だが笑えてしまった。
だって……お互いに意識してるんだもの。

恵斗さんは、兄弟を意識し過ぎて
コンプレックスになってるし。
阿部さんは、阿部さんで私が惚れたらどうしょうとか
余計な心配をしているし……。

「フフッ……」

『あ、笑わないでよ……結構恥ずかしいんだから』

「いえ……何だが似ているなと思いまして。
さすが、兄弟と言うか……フフッ……」
クスクスと笑ってしまう。

そんな心配いらないのに。
恵斗さんは、ただ私をからかっていただけ。
そもそも恵斗さんみたいな人が私に眼中にある訳がない。
地味女は、タイプじゃないと言ってたし……。

しかし阿部さんの悪い予感は……
半分当たることになるなんて
その時は、私は、夢にも思ってなかった。