あ、手を振ってくれた。
昨日もそう思ったけど
恵斗さんは、口が悪くて嫌味とか言ったりするけど
本当は、優しい人じゃないかと思った。
さっきも守ろうと支えてくれたし
冷たい飲み物まで用意をしてくれた。
ただ素直に表現出来ないだけで……心の中は、
阿部さんに似て優しい人なのだろう。
そう考えたら腹が立つよりも
親近感が湧いてくる。
自分も素直に感情をぶつけるのが下手だから
その気持ちが少しなら分かる。
テーブルに置いてある台本をチラッと見る。
天宮麻梨子が出演しているドラマ。
胸がズキッと痛みだす。
あれから……課長と彼女は、どうしたのだろうか?
やり直すことにしたのだろうか?
梨々花ちゃんのことを1番に考えている2人のことだ。
きっと……そうしたに違いない。
あぁ、辛いな……まだ割り切れないなんて
考えれば考えるほど涙が溢れてきた。
こんな辛い恋ならしない方が良かった……。
寂しくて……胸が苦しい。
いつの間にか泣き疲れて眠ってしまった。
その間、課長のことばかり考えていたのか
夢にも出てきた。
いつもの通りの会社で私は、働いている。
でも、違うのは……課長は、私を見て笑ってくれた。
優しく……その笑顔が好きだった。
「課長……会いたい……」
ひとしずくの涙が頬に触れて零れた。
すると誰かが私の頭を優しく触れてくれた。
温かくて……優しい手だった。



