「千奈美~こっち、こっち」
私に気づくなり大きな声で私の名前を呼ぶさゆり。

やめて……大きな声で呼ぶのは……。

「さゆり。気づいているから
あまり大声で名前を呼ばないで……周りに迷惑だから」
何より恥ずかしい。

「アハハッ……いいじゃん。いいじゃん。
さぁ、一緒に飲もう。はい、ビール」
笑い飛ばしながらビールを私に差し出してくる。
相変わらずだなぁ~もう。

呆れたつつもさゆりの隣の席に座り
ビールに口をつける。

さゆりは、高校時代からの親友だ。
地味で人見知りをする私と違い明るく
人懐っこいさゆりは、男女問わず人気者だった。
だから、そんな私と仲良くしてくれることは、
嬉しくもあり羨ましくもあった。

お酒と注文した焼き鳥を食べながら
私は、佐々木課長のことを相談した。

「えぇっ!?あんたが不倫!!?」

違うから……。

「さゆり。大きな声で間違えたこと言わないで。
課長は、元既婚者なだけで、すでに離婚してるから
それにまだ片思いの段階だし」
慌てて弁解をする。

「あ、そうなんだ……?
でも、いが~い。千奈美は、真面目だから
もっと真面目できちんとした人を選ぶと思っていたわ」
驚いたように言われる。