私もこれと言って自慢出来るようなことがない
平凡で地味の方だ。
もし身近にそんな凄い人が居たら……私だって
コンプレックスの塊になっていただろう。

天宮麻梨子を見た時も……敗北感とやりきれない
思いでいっぱいだった。だから
恵斗さんのどんな気持ちだったか分かる。

何だが胸が締め付けられる。

そうしたら阿部さんが
私の頭をポンポンと撫でてくる。
「アイツが、千奈美さんに酷いことを
度々言ってくるかも知れないけど……嫌いにならないでやってね?
本当は、優しい子なんだ」

少し苦笑いしながら言う阿部さんは、
お兄さんなんだなぁ……と思った。
弟思いで心配しているのがよく分かる。

「……はい。」
そんなことを聞いた後だとマネージャー仕事が
辞めたいと言えなかった。

むしろ私に何か出来ないだろうか?とか
余計なお世話かも知れないけど……そんなことを考えていた。

「さて、それより送って行くよ。歩ける?」
阿部さんが送ってくれると言ってくれた。

「……何とか……」
まずは、与えられた仕事を頑張ろう。
最初は、嫌がっていたマネージャーの仕事だったが
少しだけ新しい目標が見えてきた。

翌日。
私は、恵斗さんの住んでいる自宅まで
迎えに行く。住所は、事務所で聞いた。
思った以上の豪邸でさすがに驚いたけど……

ここが阿部さんのご実家なのね……?
さすが大手の事務所を経営しているだけはあるわね。
すると恵斗さんが出てきた。

「おはようございます。恵斗さん」
ニコッと笑顔で挨拶をした。