「阿部さん……私は……」

すると阿部さんは、私の方を向くと
「本当は、この事を言うために君を
ここに連れて来たんだ。
実際どんな会社か見てもらってから決めて
もらおうと思って。
俺は、いつまでもあの会社に居たら君が
ダメになってしまうと思っている」

「新しい環境で、新しい生活をして
少しでもいいから君が前向きになってくれたら
それでいいと思っている。
結婚とかそう言うのは、その後でもいいからさ」
真剣な表情で言ってくれた。

彼は、そこまで私のことを真剣に考えてくれていた。
私もこのままだとダメだと思っている。

思っているけど……どうしても決断が出来なかった。
まだ課長のことか忘れられなくて
私のことを忘れさられるのが怖かった。

課長と私は、マイナスにしかならない関係。

でも、もし変われるチャンスがあるなら
今がいい機会なのかもしれない。

すると阿部さんのお父様が
「何か……事情がありそうだな。だが
我が社は、そんなに甘くないところだ。彼女自身が
やる気がないなら勤まらないぞ。それでも
やりたいと思えるのかね?」
私にやる気があるのか質問をしてきた。

今でも迷いがあるけど……
阿部さんと一緒なら乗り越えられそうな気がする。
そうでありたい……。

「あの……やる気は、あります。
私からもお願いします!!」
深々と頭を下げて申し込んだ。

しばらく沈黙が続く。