中に入ると
顔は、阿部さんを老けさせた感じで
渋くてカッコいい中年男性だった。
あぁ、やっぱり阿部家は、美形の一族なのだろう。

「よく来てくれたね。
直接会うのは、初めてになるな」

「は、はじめまして。
尾野千奈美と言います。お見合いの件ですが
中止にさせて申し訳ありませんでした」
緊張して噛みそうになったが必死に頭を下げて
謝罪をする。

普通なら、こんな失礼をしておいて
顔向けが出来ないところだ。

するとアハハッと笑うお父様。
「アハハッ…いや、全然構わないよ。
理由がどうあれ陸斗と上手くいってるのなら
何の問題もない」

それは……ですね。

一度阿部さんのプロポーズを断ったなんて
とても言いにくい……。言ったら怒るだろうな。

すると阿部さんが
「父さん……じゃなかった社長。
彼女をこの会社に働かせたいと思ってるのですが
いいでしょうか!?」
とんでもないことを言ってきた。

えぇっ!?阿部さん!!?
彼の突然の発言に驚いてしまう。

「どうしてだ……?」

「彼女は、今働いている会社で問題を抱えています。
このままにしていたら彼女は、さらに深く傷つくことになる。
俺は、自分の出来る限りのサポートで彼女を
守りたいと思ってます」

「なので、近くで見てあげられるこの会社で
一緒に働たらかせたいと思ってます」
真剣な表情で私のことを話してくれた。